麦野社長

リヤドロジャパン株式会社の代表取締役社長 兼 CEO麦野 豪さん(2/3)

『私の地図帳』は、様々な分野で活躍するリーダーにインタビューし、地図を参照しながら人生の軌跡を追っていく波瀾万丈伝です。第二回にご登場いただくのは、ポーセリンアートのトップブランドとして知られる『リヤドロ』を日本で率いる、リヤドロジャパン株式会社の代表取締役社長 兼 CEOの麦野豪氏。数々のブランドのリポジショニングを成功させてきた麦野社長の、世界各国での体験談とビジョンをうかがいました。

シンガポール

人生の転機となるヘッドハンティング

3年間の駐在生活が終わり、帰国して元々いた部署に戻ったのですが、その直後に社長直轄のプロジェクト室が立ち上がり、選抜メンバーとしてそこに配属することになりました。「これからの時代ITやメディアや通信という新しい分野で商社が勝負をしなくてはダメだ」ということで、ベンチャーの発掘や育成に携わっていました。

そうこうしているうちにヘッドハンターから誘いがあって、シンガポールまで話を聞きに行きました。そこでアメリカの会社の新規事業の立ち上げに参画しないか……と誘われて、最初の転職を決めたんです。そこは、本社がアメリカのシカゴにある会社だったのでご縁を感じたんですよね。この出来事を皮切りに外資の会社でブランドや事業の立ち上げをするという仕事にシフトしていくわけです。

その後もヘッドハンティングで色々なビジネスのお誘いや転機がありましたが、面白いことに、そういう話が決まる場所は、必ず香港かシンガポールでしたね。グローバル企業のアジアのハブは、少し前は香港、そして今はシンガポールとなっていますから、その2都市にはしょっちゅう出かけていましたし、そこで色々な人生の転機となるお話をいただきました。

結構色々なブランドにお声がけいただいたのですが、もちろんお断りすることもたくさんありました。自分にとって興味があるのは、現時点で完成されているブランドではなく、いままさに改革を必要としているようなブランドで、そこが仕事を選ぶポイントでした。だから転職するときはよく周りに「全然向いてないし、イメージじゃないよ」と言われましたね。でも、そっちのほうがいいんです。自分が関わる前から自分の感性にあっているなら、ブランドイメージを一新することは難しいと思います。まったく違うからやりがいがある。

ドイツ ハンブルグ

「ペン屋」をラグジュアリーブランドに

その後フランスのパリに本社がある会社やドイツの会社で次々とブランドのリポジショニングの仕事を手掛けていくことになります。ドイツのハンブルグに本社がある「モンブラン」という会社のミッションは、当時の「ペン屋」というイメージを一新し、若い新しい世代のためのラグジュアリーブランドへ転換することでした。既に他の国ではうまくいっていたのですが、日本では「ペン」のイメージが強すぎてなかなかうまくいっていなかったんですね。

当時は全国の文房具屋にモンブランのペンがズラッと並べられている状態でしたが、それだけではただのペン屋で終わってしまう。そこをうまく整理して、ブティックを立ち上げ、ブランド転換するための施策を打ち出していきました。商品もペンだけではなく革小物や時計なども投入し、今のブランドイメージの原型を作りだしました。

スイス ル・ブラッシュ

時計ブランドのイメージを一新

その後にヘッドハンターから声がかかったのが、スイスのジュウ渓谷というところにある小さな村のル・ブラッシュというところを本拠地にする「オーデマ ピゲ」という時計ブランドです。ここは、日本の顧客も販売店も代理店の営業担当者も世代交代せずにきてしまい、本来のターゲット層とずれてきているという問題を抱えていて、そこを打破できないかとの相談があったのです。僕のそこでの最初のミッションは40年以上続いた日本での代理店契約を見直し、ジャパン社をたちあげるということでした。本社があるル・ブラッシュは「時計の聖地」と言われているとてもキレイなところで、行くのにとても時間がかかりましたが、仕事で何度も通っていました。

なぜこんな田舎にブランドの拠点があるのかというと、それは深い歴史的背景があるんです。昔、宗教改革の時に、迫害された自由を求めるプロテスタントの芸術家たちがジュネーブに逃げたそうです。さらにジュネーブから山奥に逃げた彫金技師はそこで時計のムーブメントをつくった。それが時計の聖地になったはじまりと言われています。

オーデマ ピゲでは、時計は「時刻をみるもの」ではなく「自己表現のツール」だということを明確に打ち出しました。雑誌『レオン』でも20ページぐらいの特集に掲載してもらって、大当たりして。こうした積み重ねでブランドイメージの若返りに成功したわけです。また、当時140店舗あった販売店を、1年で50店舗にまで減らしました。ふつうは広げていくのが主流だと思うのですが、あえて縮小させたのです。その分1店舗あたりのラインナップを充実させ、ブランドの世界観をしっかり伝えられるようにして、イメージの一新をはかっていきました。

スペイン バレンシア

リヤドロでの活躍

その後にお声がかかったのが、スペインのバレンシアに本社を持つ、「リヤドロ」です。昔リヤドロを集めていた富裕層の主婦たちの年齢層もだいぶ高くなってきていたので、新しい世代に対して新しい作品を提案していく必要があったのです。リヤドロというとどうしても「人形屋さん」のイメージがぬぐえなかったのですが、今の若い人は人形を買いますか?買いませんよね。お客さんが買わないものを売ったって商売にはなりません。そこでなんとかこの状況を改善したいと、声がかかったんです。

リヤドロに移ってからは、「人形屋」のイメージを捨て、「ヨーロピアン・ラグジュアリー・ポーセリン・アート」として、様々な作品を世に打ち出していきました。デザイナーとのコラボレーションをしたり、シャンデリアや食器といった機能性をもつ商品を展開したり、誰もに愛されてきたディープインパクトの作品を展開したり。3年間かけて方向転換を行い、ブランドのリポジショニングをはかったことで、開店から10年経ったブティックの売り上げを2年間で2.8倍にし、また日本市場を世界ナンバーワンにすることができました。リヤドロでは、まずは日本市場でブランドのリポジショニングを図り、そこで得た成功事例をワールドワイドへ拡大することをミッションとしています。2015年12月にスペイン本社でグローバル戦略コミッティが立ち上がったのですが、その重要メンバーも務めています。

スペインへもよく足を運んでいますが、こちらも本当に遠いですね。片道24時間はかかりますから。また先方の国民性に合わせて仕事をしなくてはいけないのも、最初は少し苦労しました。もう慣れましたけどね。やるよといってレスポンスが無かったりすることは日常茶飯事ですから。でも世界を舞台に仕事をするとき、色々な人がいて色々な文化伝統があるわけだから、相手の国民性を尊重して進めないと何も始まらないですよね。日本人の悪い癖はみんな自分の土俵を軸に物事を決めたがるところだと思います。そもそもいま日本にいること自体、自分にとっては外国にいるみたいなものですから。


【店舗情報】

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リヤドロ公式サイト

www.lladro.jp

つづく