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アパホテル株式会社 代表取締役専務元谷 拓さん(3/3)


『私の地図帳』は、様々な分野で活躍するリーダーにインタビューし、地図を参照しながら人生の軌跡を追っていく波瀾万丈伝です。今回登場していただくのは、独自のスタイルを貫きながらホテル業界で大躍進を遂げているアパホテル株式会社の代表取締役専務、元谷 拓さん。創業家に生まれて家業を継ぎ、今現在に至るまでの体験談や転機となった出来事、今後描いている未来地図についてうかがいました

東京 早稲田

人と人とをつなぐ幸せ

名古屋のサラリーマン生活から東京に戻ってきた私は、ほぼ人脈がゼロでした。学生の時の友達とはなかなか会えないし、かといって東京で新しい繋がりが頻繁に生まれるわけでもないし……どうしたものかと考えて、28歳の時に勉強会を開催しようと思い立ちました。そこで結成したのが「流磨会」という会です。講師の方を呼んできて、ノーギャラで専門分野の話をしていただき、それを50人くらいで聞くんです。そのあと集った人たちが名刺交換をしながら交流を深める……といった会でした。

社会人になるとどうしても、学生時代の友人とは疎遠になって、取引先と先輩や上司といった人たちとだけの関係になってしまう傾向がありますよね。「友達」と呼べる人を新たにつくるのは難しくなってくるんです。でも流磨会のおかげで、人脈というよりもむしろ友達がとても増えました。流磨会は38歳の時まで年5回ぐらいのペースで10年にわたり続けていましたが、累計3000人ぐらいの人が集ったのではないかと思います。

流磨会を立ち上げた当時は、人を沢山集めることに躍起になっていたのですが、途中から少し考えが変わっていき、人を多く集めるよりも参加者の満足度を上げていくことを意識するようになりました。そういうわけで、次第に「流磨会発起人代表」という立ち位置ではなくコネクターとして動くようになり、参加者同士を積極的に紹介することに徹するようになりました。38歳で流磨会を卒業しても、「経営者交流会」という名前でゲストやキーパーソンを囲む会を開催したり、色々な人をご紹介しあったりする日々を続けながら、今に至っています。

ときたま有り難いことに『元谷 拓を囲む会』を開催してくださる方もいるのですが、囲まれるよりも、囲むほうが好きでして……だいたい月30人、年間3000人は紹介しているのではないでしょうか。会の主催は大変な時もありますが、おかげさまで嬉しい報告もたくさんあり、「案件が受注になりました」とか「講演が決まりました」とか、仕事に繋がる話も結構多いんです。社員の結婚式で1年前くらいに出会ったとある食品メーカーの社長がいるのですが、「専務から紹介してもらった人の名刺、数えたら9ヵ月で70枚にもなっていましたよ」なんて言われましてね。そのあと会ったら更に100枚ぐらいに増えたみたいなのですが、そのことにとても感謝されました。

何のために……と言われると、よく分かりませんが、そうやって人をお繋ぎすることで、みんながハッピーになってくれることがすごく嬉しいんです。私は別に手数料をとっているわけではありませんが、どこかで「そういえばアパの元谷が仲介してくれたっけ」と、なんとなく我々を思い出してくれたらいいかなと思っています。うちには兄もいますし、自分自身はまだまだ「ミスター実力不足」ですので(笑)。そういうところで少しでも皆さまのお役に立てたらと思っています。

東京 赤坂

東京の中心地から、独自のサービスを

いま、アパグループの本社は赤坂にあります。東京にはだいぶ前から早稲田に自社ビルがあったのですが、あまりにコンパクトだったので、本社機能を金沢から東京に持ってくる時に、代表が赤坂の地を選びました。国会議事堂にも近く、山手線のど真ん中にあって、どこに行くにも近い赤坂はまさに東京の中心であり、日本の中心だという考えだったようです。赤坂をローマ字に変換すると、前から読んでも後から読んでも「AKASAKA」ですよね?そこに「APA」との共通点を感じているというのもあります。

その日本の真ん中で、アパホテルは世界に通用する、独自のホテルの在り方を追究しています。まず、部屋は全体的にコンパクトにして、快適性を追求する「高機能・高品質・環境対応型」を目指しています。部屋をコンパクトにすれば冷暖房効率は高まります。部屋が広すぎると、なかなか快適な温度に調整するのが難しいこともあるからです。一方、ベッドやテレビはある程度大きめのサイズにして、寝心地の良さや現代人の需要を叶え、効率よく満足度を高められるようにしています。

これまでお話したように、昔から色々なホテルを見て回りましたが、参考にしているところは実は特にないんです。いま、ホテル業界は7割以上が赤字で、たとえ広くてカッコよくて、流行っていそうなホテルでも、実は採算がとれていないことが意外に多いのが現状です。ですから、そういったところをマネをしても、経営としては成り立たないですよね。もちろん、デザインやサービスといった面で、インスパイアされることはありますが……他を参考にするよりも、ホテル業界の中で常に新しいことにチャレンジすることが必要だと思っています。

たとえば、当社のホテルは、どの部屋にも燃えるゴミと燃えないゴミ用のゴミ箱を2つ 20年以上前から設置しています。たいていのホテルは、ゴミ箱は一つで、分別をお客様がするのではなく、清掃のお姉さんがあとで仕分けをするというスタイルですよね。しかし我々は「お客様から意識をもって分別してもらう」という願いを込め、ゴミ箱は2つ設置するようにしています。

また、アパホテルでは全客室に「煙ふせぐ~ん」という煙を防ぐための防災グッズを自主的に設置しています。2001年に新宿歌舞伎町でビル火災があり、何十人も死傷者が出たという大変な事件がありました。当社のビルではなかったものの、その火災は「防災・防火への意識を更に高めよう」という動きにつながっています。新宿の火災ではほとんどの死者は火傷ではなく一酸化炭素中毒で亡くなってしまったんですね。ですから煙から身を守り、呼吸を保つというのがとても大切になってくるんです。そういうわけで、万が一何かがあったときに生存率を高めるための備えとして「煙ふせぐ~ん」を設置していますが、これは消防検査などでもいつもお褒めの言葉をいただいていますね。

いま、社長や私含めアパホテルの社員約1,200人が上級または普通救命技能認定証を持っています。こちらは「AEDの使い方含めた応急手当の方法について、消防庁の講習を受けている」ことを示す認定です。人命救助にあたる最低限の基礎知識をスタッフに身に着けてもらうことで、安全への意識を高めるよう努めています。

東京

東京オリンピックに向けて

我々が最も注目している場所……というと、まさにここ、東京です。資産価値も客単価も高いですし、とにかく需要がありますから。前々から東京に圧倒的に注力し、土地を仕込んでいます。ここ5年間の統計によると、東京で最も施設を増やしたホテル業者は、アパホテルなんです。

2010年に代表が「SUMMIT5」という中期5ヶ年企画をたてたのですが、その頃はまだ東京オリンピックが決まる前で、リーマンショック直後の土地が冷え込んでいる時期でした。その時に、いずれ東京オリンピックが必ずくるから、その時の為に仕込んでおこうという目標を立てていたんです。今となってはホテルが足りないと言われているくらいですから、早め早めに動いていて良かったと思っています。

先読みをするということは、我々のビジネスには必要不可欠なことです。例えば昨年末に泉岳寺に563室のアパホテルがオープンしましたが、その土地を購入した震災直後は、品川駅前から少し離れた泉岳寺周辺には殆どホテルはありませんでした。しかし、今まさに山手線の泉岳寺駅を建設中でして、2020年までに駅周辺に様々な複合ビルができることが決まっています。今となっては、泉岳寺界隈にますます人が集まることが予測できるでしょう。

こんな話をしているうちにも続々とアパグループの施設はオープンしていて、近いところですと、6月17日には巣鴨駅前にアパホテルがオープン予定です。今後も両国駅前に1000室のホテルを建設予定ですし、西新宿5丁目 にも750室の施設をつくりますし、内閣総理大臣官邸の斜め前の土地でも500室規模のホテルをオープンさせる予定です。

先にもお話しましたが、ホテルができることで出張客や観光客が訪れて、周辺の店が潤い、人が集い、人々の暮らしも街も豊かになります。そうすることで社会を豊かにしたい、というのが一貫した私たちの理念です。常にその想いを忘れずに、時代の動きを見据えながら、ご縁のある地域や、社会のお役に立てるよう、日々努めていきたいと思います。


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